浴室のタイルの壁に、ボディソープだかシャンプーだかの白い泡がへばりついている。大きめのそれは重力に沿って這うように落ちていくはずだ。と思っていたら、それはスルリと滑り落ちた。水分を多く孕んでしまったのかもしれない。 重すぎれば落ちてしまうんだろう。
私が想像する自殺は、脱落だ。宙吊りの鉄砲から手を離すこと。重さに耐えきれなくなること。そこから降りてしまうこと。
会社帰りの地下鉄に入る階段で、泡が落ちるイメージを反芻している。自分もここから落ちないかな、落ちないよな、たぶん。浮遊感を意識して、足下が軽くなる気がした。