舞城/王太朗(ネタバレというか引用)

阿修羅ガール (新潮文庫)

阿修羅ガール (新潮文庫)

「自分を壊す、自分を殺すってのは、脊髄通して脳まで伝わるタイプの実際の痛みってものさえなかったら、結構皆のやりたがることなのだ。この世にいるのは自分のことが大好きな人間はばかりじゃない。そういう人が好きじゃない自分を殺して新しい自分を求める。」
「自分が実際に生きているのか、本当はすでにとっくに死んでいるのに、ゆっくり長〜く死にながら、自分で勝手に作り上げたイメージをのんびり楽しんでいるのか、なんて区別、誰にもできない。少なくとも私にはできない。私はなんかすごい体験しちゃったし、それが実際に体験したことなのかどうか、ちょっと確信持てないのだ。いろんなところを通り過ぎたし、これで全部を通り過ぎて、グルッと一周回って元に戻ってきたのかどうか、私には判断がつかないのだ。」
「でもそんな風に、何かを自分が作り上げたイメージってことにしてしまえるなら、私自身だって架空の存在なのかも知れない。我思うゆえに我ありって言うけれど、もし自分と他人がどっかでくっついていて、相手の内側にお互い入ってこれたりするんだったら、ホントに我思ってるの?ってことになる。我思ってるつもりで、実は別の誰かが思ってることもありえる訳だから、我思ってると我思ってるけど、我思ってるんじゃなくて彼思ってるのかもしれない。じゃあ我ありってことにならない。」
「私は自分の存在を疑うことさえ楽しんでいる。人間、楽しむということが最優先だし、そう心がけなくても、最優先してる。苦しんでいる人は、その苦しみを楽しんでるんだし、頑張ってる人は、その頑張りを楽しんでる。人が今やってることが、その人の選んだ、自分にとって楽しいことなのだ。」
ここらへん、思わず笑ってしまう。おもしろい。舞城いいよなー。かっこいい。ものすごい好き嫌い分かれると思うけどね。阿修羅/ガール批評してる人けっこういる。三部の書き方に文句がある人がいるっぽいけど、私はわかりやすく書いてくれて嬉しいと思ったよ。