優しかった人のこと

ちょっと他から触発されて、感傷的な気分になっている。
人が亡くなったとき。思い出すのは、優しい記憶ばかりだ。理不尽にも思えるくらい。そうか。あの人は、もういないのかと。


ぼんやりと過去に思いを巡らす内に、ときどき、ある場面である人がした言動の意味に気が付くことがある。たぶん、こんな理由で、あの人はあのときそうしたんだろう、と。当時はわからなかったけど、前よりは情緒的にも大人になって、いろいろわかるようになった。打算が透けて見えることもあるけど、遠回しな配慮だったということに気付くことが多い。私はそれに鈍かったようだ。
そういえば、あのときあの人は心配していたのだなと、ふと思い当たって、背筋を正さないといけないと思う。
大丈夫。私は、優しい記憶があるならば、きっと終わりまで生きていけるはずだと信じている。